緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/04/24

彼と二人、超大型乾燥機の前で身を寄せ合い、回る洗濯物をボーッと眺める午前零時。まだ乾ききっていなかった洗濯物を追加で乾燥させていた。ボイラーのガスが点火する音、洗剤の匂い、整えられた空調。会話は無くただただ洗濯物を見つめる視線、乾燥機の機械音だけが存在している。取り出した時の洗濯物の温度然り、コインランドリーにまつわるその全てが好きだ。彼も「この光景を撮影して映画にしたい」と言っていた。

帰宅してすぐ、ソファで横になって寝てしまっていた。彼はその間に部屋の後片付けをし、自分を起こして寝室へ行くように言った。「歯磨き、、」と言いながらベッドに潜り込むと、彼が歯磨き粉を付けた歯ブラシ、水の入ったコップ、空の手桶を次々と寝室の自分の横まで持って来て、「良い方法を思いついた」と言っていた。“良い”のだろうか。自分がどんどん駄目になっていくのではないかと思う。

八時、次女からのビデオ通話で目を覚ました。姪が九時に此方へ来ると言う。彼はきっと乗り気ではなかっただろうに、嫌な顔ひとつしなかった。あまり時間がないのに、彼はおスケベを始めた。(日記に綴るに適切な言い回しを模索している)

シャワーを浴び終えてすぐの頃、次女と姪が到着した。午後からの苺狩りに合わせ、姪は苺柄の洋服で現れた。「パンツも!」と苺柄の下着を彼に見せつける姪。苺モチベ高まり過ぎな?と皆で笑った。次女は離婚調停絡みでしたい事があるらしく、自分達に姪を預けて帰っていった。

身支度を済ませて少し動画を見てゆっくりした後、三人で彼の家を出た。

業務スーパーへ苺狩り用の大きな練乳を買いに行った。姪は彼にグミをねだった後、彼を連れて自分の所へ買ってもらっていいかの許可を得に来た。頼む相手と手順を分かっていますね、となる。三歳とは思えぬしたたかさと天然の愛嬌が、自分の幼少期のそれらと重なる。

次に気になっていた近くの大きなスーパーへ行って、飲料など買い物することにした。少し暑いくらいに暖かい日で喉が渇いていた。

立ったまま乗れるカートに姪を乗せて周り、ジュースや菓子類等、気に入ったものを次々とカゴに入れていく。そこでも姪は菓子を欲しがった。何でも買い与えると次女から怒られそうだなと思いつつ、一つだけ、と言うと、アンパンマングミ→パックンチョ→チュッパチャップスになった。小さい頃は長く楽しめる、という観点で飴が好きだったことを思い出した。糖類だらけのカゴをレジに通し、ヤバい親だと思われているだろうか、と思うも、まぁ、はっきり言ってどうでもいい。

空腹に苺は良くないねぇ、となり、姪も「エビ、イカ、サーモン」と言い出したので回転寿司に行くことにした。開店直後の空いた店に入り、席に着く。終始彼の隣をキープしている姪は、かなり彼に熱をあげている様子。苺の為に少しでやめておこうね、と話していたのに結局三人で十五皿にはなっていた。

頭痛がすると言う彼に少し休んでもらう為自分のアパートへ寄り、自分はその間に服を替えたり化粧をしたりした。実のところは姪が遊びたがって、彼はちっとも休めてなかった。

あっという間に時間が過ぎて苺狩り会場の農園へ向かう。少し遅れ気味に到着した。我が一族で自由参加制のイベント、苺狩り。去年は二度も行ったから、きっと苺が好きなのだと思う。きっと、と言うのは自意識で苺は好きな部類の食べ物ではないと思っているから。今年は彼と甥が新しい顔ぶれだった。

地元では名を揚げ始めているその農園のオーナーと一緒に働き始めた友人=自分の会社の同僚Mさんの旦那様で、冷蔵庫受け取りでお会いした以来でお話した。事前にMさんから伝わっていたのか、顔を見てすぐに気づいてくれた。冷蔵庫の調子を聞いてくれたり、コロナのお見舞いの言葉をくれたりして、何と言うか、関西人だよなぁと思った。あと仕事モードだったからなのか、先日よりしっかりとして見えた。あとあと、Mさんを“妻”と呼んでいて、当たり障りのなさに価値を置く最適解選択タイプねぇ、と思った。

苺は二種あり、紅ほっぺの方が美味しかった。章姫は水気が多くて味がぼやけていたように思う。買ってきた特大練乳に集られながら、四十五分楽しんだ。終了間際、律儀にヘタの数を数えたら六十六粒も食べていた。これは多いはずなのに、我が一族では下位組になるからウケる。農園泣かせの一族、食べすぎ。看板下でMさんの旦那様に集合写真を撮ってもらって解散した。

その後は彼と、ずっと気になっていたセレクトショップへと向かった。デザインプロダクト、と言うらしいが、要は○○作家だとかデザイナーだとか呼ばれるような職人が作ったものを取り扱うお店。

店内に入ると、生活用品を始め、洋服、書籍、音楽なども置いてある粋な空間で、すぐに財布の紐が心配になった。二人ああだこうだ言いながら見て周っていると、同世代かな?いや少し若いか?くらいの洒落た男性店員が話しかけてくれた。話の流れで、その店員さんが最近この店を目がけて移住してきた事、以前は東京で家具のデザインをしていた事、出身も東京である事、などを知る。彼は職業を訊かれてデザイナーだと話すと、そこからは二人で盛り上がっていた。自分は少しちぇーっとなって、店内を周ったり彼等の元に戻って会話に参加したりを繰り返した。

長々と物色した後、持ち手が特徴のマグ(CANASAというブランド)と玄関の物置用にタイル(多治見のもの、メーカー名失念)を購入した。ちまちまと作り上げられた気に入りのものを、やはりちまちまと集めていこうと思う。彼もタイルや器のようなもの(?)を購入していた。

大満足で店を出て、県立図書館へ寄ってもらう。最近は漸く二人の色恋沙汰も落ち着いてきたので、個人的な趣味である読書をそろそろ再開させたいと思っていた。目当ての中野孝次『清貧の生きかた』を書庫から出してもらい、甘糟りり子など合わせて四冊借りた。遅れていた生理もやって来たことに気付いた。何だか嬉しい気分になった。

図書館の駐車場で、彼が出がけにダッシュボードに置いた特大練乳の主張の激しさに笑っていると、隣に駐車する車の窓が下がり、綺麗な女性に話しかけられた。「どうして練乳なんですか?」「苺狩り帰りでして、、」「あ、そういうこと!かわい~!どんな人が帰って来るのかと思って待ってみちゃいました」二人でいると、そんなことある?レベルで人から話しかけられる。

一度彼の家に寄って荷物を取り、途中買い物をしてからアパートへ帰った。今夜は彼が此方に泊まることになった。

夕食に冷蔵庫内の野菜をローストし、ワカメスープ、卵とコーンの炒飯、胡瓜とワカメの酢の物を作った。お酒も二、三缶開けた。順にシャワーを浴びて、ダラダラと過ごした。自分がお風呂に居る間に洗い物など済まておいてくれる彼は優しいとも有難いとも違う気がする。きっとどちらもなのだけれど。

十分置きに自分の誕生日を自分でカウントダウンして、それを逐一隣の彼に報告していた。

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