緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/04/23

七時、スマホのアラームが鳴る。彼がくすくす笑っていたので、はて、と思ったけれどすぐに思い出した。昨夜アラームを鳴らすなと言った張本人のスマホが鳴っていたので、彼的には可笑しかったのかもしれない。

二度寝して起きたら九時か、それくらいだった気がする。十時頃に配達の人が彼の家のチャイムを鳴らすまで、ベッドの上でセックスをしたりしてずっとダラダラしていた。届いた物は木をやすりがけする機械と木の粉を吸い込まないようにするマスクだった。自分のアパートで使うベッドフレームを彼がDIYしてくれる。それで必要になり、前から欲しかったこともあってポチッたと言っていた。今日は休日出勤しなくてもよくなったので、その木材調達にも付いて行く予定。

今日すべきことをまとめ、身支度などゆっくりしていたら昼前になってしまった。まずは外で昼食を、と彼の家を出た。

前に行ってみたいと挙げていた店は混み合っていて、終わりの時間が決まっている今日は時間を無駄に出来ないので、別の伊料理店に電話し、席を予約してから向かった。

数年ぶりに訪れたピザが美味しいお店。メニューが変わり、価格帯が上がっていた。客の年齢層も以前より上がったような気がする。ランチコースを頼み、生ハムとルッコラのピザ、イカ墨のパスタを選んだ。主食に至るまで三度、前菜などの料理が運ばれてきた。地物を使った料理が多く、食べ方等しっかり説明してくれる。このような店だっただろうか。カトラリや器にも拘りが見え、良い意味で変わったなぁと思った。イカ墨のパスタを大が付くほど好いているが、今まで食べてきた其れらの中でも一番好みの味がした。ピザは相変わらずクリスピー寄りの生地で美味しい。ナイフとフォークで食べた。ピザをナイフとフォークで食べるのは、フランスへ訪れた際、現地の人がそうしているのを見た。手も汚れないし如何にも文明人らしくて良いじゃないか、と真似て以来、ずっと好きでやっている方法だ。

彼もこの店を気に入ってくれたようだ。好みの店を共に食事する相手も好いてくれると言うのは、なんとも嬉しい。自分達を結び付けたのは食が大いだよね、などと話す。時間がないのにコース料理なぞ頂いた所為で、店を出たら十四時になってしまっていた。

一度自分のアパートへ寄ってもらって簡単に化粧などし、すぐに買い物へ出かけた。

UNIQLOで洋服、無印良品で香立てを購入。彼は会社で珈琲を飲みたいらしく、スタバでタンブラーを買っていた。自分も便乗して二百円弱の繰り返し使えるカップを購入した。

目的を達成したので漸くホームセンターに向かった。ヘッドボード無し、太めのすのこの様な見た目のローベッド、と彼に要望している。上に敷くマットレスを畳めば、日中は小上がりの休憩スペースとして使えると思っている。

店内に並ぶ様々な木材を物色し、結局パインの集成材、20×500×4200のものを二枚に決めた。それを250×1500八枚にカットしてもらった。余りの500×1200二枚でキッチンの作業台も作れる、と彼は言っていた。物凄く楽しみ。

木材店に居た時点で時間が押しており、彼はデザイナー仲間の友人に連絡を入れていた。今夜は彼の家でミーティングがあるらしく、自分は予定していた飲み会が無くなったので、邪魔にならないようにその場に居させてもらうことになっていた。

一旦彼の家へ木材を置きに行き、自分のアパートへ寄って必要物を取り、彼の友人Mを家まで迎えに行く。初めてお会いするMに挨拶をし、遅れたことの謝りを入れた。

まず彼とMを彼の家の前で落とし、自分はそのまま彼の車で実家へと向かった。

実家へ着くと、姪は彼も一緒だと勘違いしたようで、自分だけだと知ると少し残念そうな顔をした。次女からヘアドライヤーを借り、母からビールやほうれん草などもらい、数十分の滞在でまたすぐに実家を出た。

彼の車に積んでいた大量の洗濯物をコインランドリーで洗濯機にかけ、一旦彼の家へ戻った。彼とMはソファに並んで座り、ミーティングをしていたようだった。彼の家の洗濯機も回してもらい、自分はシンクにそのままにしてある食器類を洗ったりして二人の様子をチラチラ見ていた。Mは身長が百八十五センチもあるそうで、隣に座る彼が子供のように見えて可笑しかった。

テーブルには大量の冊子が置かれていた。今年は展示会開催を延期する代わりに冊子を出すらしい。参考図書の中に多摩美、東京藝大などの卒業制作作品集もあり、パラパラと見た後、「東京藝術大学の雰囲気が好みかな」と呟くと、Mは「東京藝大の方はどっちかと言えば、お上品なところだと思う」と言っていた。芸大や美大の世界にはあかるくないので興味津々だったけれど、ミーティングの邪魔をしてはいけない、と脳内が煩く、もどかしかった。

洗濯機が鳴り、Mのお腹も鳴っていたので、乾燥機にかけに外へ出るついでにウーバーイーツしてあげることにした。二人のメニューを聞き、洗濯物を持って彼の家を出る。

まずはコインランドリー、彼の洗濯物と自分の洗濯物を超大型の乾燥機に纏めて入れて回した。その足ですき家へ行って彼等の分の牛丼と、自分の牛皿をテイクアウトして彼の家へ戻った。

三人で遅めの夕食をとる。二十二時前だったと思う。自分はビールを開け、牛皿を食べた後はポテチも開けた。Mが話を進めたそうにしていたので、邪魔しないように彼のイヤホンを借りて動画を見たり音楽を聴いたりしながら日記をつけていた。

二十三時頃、視界に彼等が片付け始める様子が映ったのでイヤホンを外して会話に参加した。ミーティングが終わったようで、彼の学生時代の話をMに聞いてみたり、しばらく雑談していた。自分のことを「デザイン学科にはいなかったタイプだ」とMが言うので、内心、“デザイン学科には”ではないのだよ、と思っていた。自分のような人間にはまだ一人しか実際に会ったことがない。

彼の運転する車でMを家まで送り届けた後、洗濯物の回収にコインランドリーへ行った。日が変わっていたと思う。