緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/04/10

七時前に起きた。ホテルでの療養も今朝で終わり。変に緊張して朝方何度も目が開いた。八時のお弁当の時間まで退所前にすべき清掃や荷物の整理をした。八時、お弁当を取りに行き、家族と通話しながら食べた。食後、退所前最後の掃除をして荷物を纏めていると、事務局の人から最後の体調チェックの電話が来て、最終確認をされる。

八時四十五分、父からホテル裏に着いたと連絡が入ったので、ホテルの事務局の人に連絡を入れて部屋を出る。指示通り下りて行った先にあった箱に、返却するカードキーや体温計等をジップロックに入れて返す。入所した時には気付かなかった監視カメラが通路に所々設置されていて気味悪かった。

久しぶりに外へ出ると、陽の光が眩しい。停まっている車に乗り込むと、父は嬉しそうな顔をしていた。一度帰宅し、家の中には入らず自車に乗ると、車内には春菊やほうれん草、じゃがいも等家で採れた野菜類が積まれていた。母が玄関から覗いて、「食べてね」と言っている、多分。有難い。

すぐに次女、妹、実家、彼に差し入れをする為買い物へと向かう。リストにして纏めたメモを見ながらあれこれと買い物を済ませると到底一人では持てないような量になった。人毎に袋に纏めて、まずは先程まで居たホテルへと向かう。次は表口から入って、次女と妹分の差し入れを事務局の人に託した。次にドラッグストアに寄り、買い足す物を買って実家に差し入れを届ける。玄関先に置いて、窓をノックし母に来た事を伝える。すぐに車に乗り込んで家を出ようとすると、母と母に抱かれた姪が玄関先まで出てきて手を振っている。姪は自分の名前を一生懸命呼んでいた。何故家から出てはいけないのか、何故母と離されているのか、理解しているかどうかは分からないけれどしっかり守っている姪の健気さに胸が締め付けられるような心地になる。

家をあとにして最後の差し入れ先である彼の家に向かった。買い物中からずっと彼と通話を繋いでいたので、着いてすぐに下へ降りてきてもらう。ガラスのエントランス越しに彼と再会し、荷物を床に置いて車に乗り込む。それから彼が出て来て、荷物を受け取ったことを確認し、彼の家をあとにした。今日一日だけでも買い物に周りたかったので、まだ彼と接触してはならない。

その後は一人で無印良品UNIQLOKALDIで買い物をして周り、一度新居に荷物を置きに戻る。久しぶりに外出したせいか、はたまたコロナの後遺症なのか全身の倦怠感が出てくる。

新居に来てもらうよう伝えた彼と駐車場で落ち合い、距離を保ったまま新居に荷物を運び込むのを手伝ってもらった。窓を開けて換気し、マスクも着用して接触しない様お互いに気をつけながら、放ったらかしになっていた新居の引越し荷物を少し片す。療養中に終わったと言っていたガスのバルブ取り替え工事の事を思い出し、給湯器をつけてお湯を出してみようとしたが、エラーになってしまったので管理会社に連絡をした。一体何回管理会社に連絡すれば良いのだろう、と思う。

ガスの対応は週明けになると言われたので、洗濯物を持って近所のコインランドリーへ行き、乾燥機にかけている間に併設のスーパーで買い物をする。彼と退所祝いに刺身を食べよう!となっていた。あまり期待はしていなかったけれど、地物の魚を多く取り扱っているスーパーで、テンションが上がって五、六種柵で刺身用の魚を買う。通話を繋いでいた彼にも見せて選んでもらったりした。他にも約一週間分の食材や野菜を買って一度新居へと戻る。ガス会社から折り返し連絡が来て、確認してもらいたいことがある、との事だった。緊急時にガスが止まる時に点くランプがついていないか、との事だったが、外のメーターを確認すると作動していなかったので、週明けにまた見に行きます、と言われて通話を切られた。管理がなっていなさすぎて困る。その後、乾燥が終わった洗濯物を取りに行き、荷物を纏めて新居をあとにする。

彼と各々の車でいつもの駐車場へ移動し、車を一つにし、彼の家へ帰宅する。一度彼の生活空間に立ち入れば、彼の療養期間である十五日まで外へ買い物へ行ったり出来なくなるので、その前にコンビニに寄ってもらって思い出した物を更に買い足した。

大荷物を抱えて彼の家へ上がった。今夜から一週間は此処で生活させてもらう。荷物を置いて手洗い嗽をした後、まずは彼と抱き合った。きっとここ数日間、一番辛かったのは彼だろうと思う。実家から離れて一人暮らしをしている状況で社会から隔離されてしまえば、孤独で仕方ないだろう。しばらく抱き合っていると、彼は涙が出そう、と言っていた。

二人で手分けして夕食の準備をした。彼は刺身を切り、自分はオクラをごま油やつゆなどで和えたものを作る。KALDIで買った生ハムやブルーチーズも皿に盛ってワインを開ける。ワインはKALDIでciaoという名前のカラフルな缶に好奇心を抱いて全種類買っておいたもの。

準備が終わって乾杯し、食べ始める。ホテル生活では気付かなかったけれど、食事をしていると嗅覚が鈍っていることを自覚した。其れに伴ってなのか味覚も弱い気がする。刺身もチーズも生ハムも美味しいのだろうけれど、分からなくて辛い。そもそも食欲もあまりなく、朝弁当を食べてから何も口にしていなかったのにすぐに満腹になってしまった。

湯を張ってもらって、その間に彼と身体を重ねる。性的な行為は人を丸裸にする、身も心も。泣いてしまった。

事後、二人でお風呂に入り、寝支度を済ませ、寝室へ行って寝てしまった。まだ症状が出ているのか、疲労感がすごかった。