緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/03/29

七時より前に起きた気がする。身支度、彼の家に泊まる準備をする。今日は初対面の人に会う日なので、いつもは省いてしまうアイシャドウやアイライン、マスカラを目にのせてみた。髪の毛がどうしても決まらなくなってきたので、そろそろ美容室に行くべきかもしれない。

出勤途中、ローソンに寄って特茶を買った。

九時から仕事。暇だと嘆き続けていたら、外回りについて行かせてもらうことになった日。十一時頃、MさんKさんと事務所を出て、営業先に撮影する商品を受け取りに行く。受け取りはすぐに終わり、お昼ご飯にまぜそばが有名なラーメン店へ向かった。

平日の昼間にしては賑わっていて、人気なだけあるなぁ、と思った。席に着いてまぜそばを注文し、待つ間も食べている間も、ほぼずっと恋愛に絡む話をしていた。Mさんに彼を見せてと言われたので、スマホを出して写真を探す。普段全く撮らないので、彼の写真が二三枚しかないことに気付いた。彼の顔が分かる唯一の写真を見せると、Mさんは「え、いい!いい!でも意外です、前髪ある系の正統派を想像してました!え!個性派!!いい!いい!お似合い!」とテンションが上がっていてウケてしまう。まぜそばは美味しかったけれど、段々と腹痛がしてきてしまう。アイス!と盛り上がる二人と一緒にアイスの食べられる店を探すと、次の行先の近くにあると分かり、そちらへ向かう。

方向音痴だと言う二人に代わって社用車を運転した。駐車場に車を停めた後、百貨店の一階に入るスイーツ店でジェラートを買ってベンチに座って食べた。牛乳とティラミス、あまり好みの味ではなかった。ジェラートを食べている最中は、ずっと給与について話していた。

三人とも根が真面目な方なので、盛大にサボったことに若干の罪悪感を抱きながら、次の訪問先である工芸品の展示会会場に歩いて向かった。

作品の撮影に伺ったのだが、会場に着くと作家さんがまだ来ていないと言われる。少し待つと、割とすぐにいらっしゃった。撮影するものを選び、ちゃっちゃと撮影を始める。思っていた以上に時間と労力を使った撮影だった。

疲れ切ってしまったのでセブンに寄って炭酸飲料を買い、帰社する。昼食のまぜそばに入っていたチャーシューの脂で胃痛が酷いことになってきていて、食べたことを後悔した。

十八時退勤。帰り道、胃痛に耐えながらとぼとぼと歩いていると、追いついてきたMさんに「遅くありません?」と声を掛けられる。「明日胃腸炎で熱出して休んだら笑いますからね~」と言われ、別れた。笑ってくれるなら有難い。

彼の職場の駐車場まで彼を迎えに行き、夕食を予約してあるお店へ向かう。彼の知人の不動産会社をしている方との席に同席することになっていた。道中、彼にずっとお腹を撫でてもらっていたら、胃痛が和らいでいくのが分かった。

ワインが大量に置いてあるフレンチバル。店内に入ると、“カジュアルに楽しめる”とHPで見たけれど、カジュアルとは?と問いただしたくなる様な店内。衒いなく表現するのであれば、“ええとこ”だった。忘れたスマホを車に取りに行って戻ると、その間に先方のAさんが到着したようで、彼と談笑していた。

はじめまして、と挨拶すると名刺を頂く。自分の名刺は事務所に置きっぱなしで持ち歩いていないので、そういうとこだよなぁ、とセルフツッコミが入る。牛豚、脂の濃いものが食べられない自分に気をまわして頂いた店選びに詫びと感謝を伝えながら、メニューを見て注文を選ぶ。何度か聞いても、飲んでいいよ、と言う彼のお言葉に甘えて白を選んだ。Aさんは泡を一杯目に選んでいた。サラダ、テリーヌ、鴨、牛ホホ、ハチノス、など頼む。

グラスを合わせて乾杯する。彼のブラッドオレンジジュースが美味しそうだった。彼とAさんの出会い話から始まる。この会のそもそもの目的だった不動産についての話も聞く。契約書を見ながら、初期費用や条文の裏側と言うと大層に聞こえるが、所謂裏の話、不動産の実態を教えて頂いた。順番に出される料理を頂きながら、映画話、自分達の馴れ初め話、仕事話、山登りの話、と段々場が温まって行くのを感じていた。「コンサル、とか、プロデューサー、とか、カタカナ辞めろってマジで思います、仕事内容で言え、と」と口走る自分にアルコールの回り、若しくは気を許し始めていることを自覚する。Aさんは吹いていて、笑ってもらえて良かったけれど、少々出過ぎた真似を、と内省もする。四時間弱、本当に色々なことを話した。エッジの効かせ方、距離の取り方、間の取り方、話の振り方、それら全てをAさんは左脳的にではなく極自然に上手くやっているように見えた。話したいと思っていたいくつものことに辿り着かないままAさんに場を閉めて頂く。ご馳走にまでなってしまい、気が引き締まる心地がした。

お店を出て、五六杯は飲んでいたAさんの様子を見、「乗って行かれますか?運転するのは彼ですが、、」とAさんをお送りすることにする。Aさんの豪邸に到着し、門にある彼がデザインした表札を見せて頂いた。「では、独立するのを待ってます」と激励の言葉を貰う彼を見て、此方も何だか嬉しい気持ちになった。

Aさん宅前で別れて車に乗り込むと、白、白、赤、シェリー、の四杯分のアルコールが一気に回る感覚がする。彼と二人になって、気が緩まったこともあると思う。酔っている自分は積極的だ。

彼の家に着き、湯を沸かしている間にセックスをする。二人でお風呂に入り、寝支度を済ませて一緒にベッドに入って眠りについた。