緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/03/15

七時起床。起きて行くと、母から半ば無理やり朝食を食べるよう勧められたが断った。不満そうな母に、父は「無理に言うな」と肩を持ってくれた。早起きしてきた妹が、母に勧められるまま食べている様子を見て、小さな頃から其れが些細なストレスだったな、と思う。母の要求に従うことは殆ど何においても肉体的に不可能で、“言う事を聞かない子”というレッテルを貼られ、嫌われるのではないかと不安を抱き、対応できない我が身、其の全てが哀しかった。

それより喉の渇きが異常。身支度、彼の家に泊まる準備をして家を出た。

ローソンで林檎ジュースを買う。異常な喉の渇き、唇もカラカラ、目も充血している。粘膜の乾燥はこわい。

九~十八時、仕事。一日メルマガを作っていた。合間に溜まっている日記をつけながら、この季節の記憶は全てIに繋がるようになってしまったな、と思い返す。いちいち、Iを、Iが、と書いていたらキリがない程に頭に浮かぶので、無自覚だが日記内では言及していない。顔に触れる生暖かい風の感触が、温度が、Iの記憶を立ち上げる装置になってしまっている。

お昼におにぎりとメロンパンを食べる。M氏から良ければイベントへ来てください、という内容のメッセージが夜中に来ている。行きたい。昼休憩はkaiのInstaライブをアーカイブで見ていた。

十八時半に仕事を上がれるように頑張る、といっていた彼の言葉を過度に期待したのがいけなかったのかもしれない。定時退勤して彼の職場の近くのATMで記帳する。給料日なので、スーパーでルマンドホワイトロリータ、チョコリエールのブルボン三種の神器と、明日の朝用に飲むヨーグルトを二本買った。本当はルーベラも欲しかったけれど売り切れていた。

彼の仕事が終わったと連絡が来たのは十九時半。それまで物欲のない自分には少々苦痛の商業複合施設で時間を潰した。

雇われのデザイナーという職業柄、〆切があるのだろうし、先方との兼ね合い、彼の性格もあって、上がろうと思って上がれないことを頭では理解している。ただ、早く上がれるかも、と期待させられた分、上げて落とされた気分になる。それに小さな頃、飲み会からすぐ帰るといってはいつまでも帰ってこない父を半泣きで待っていた過去とリンクしてしまう。明確な終わりを提示されない待ちぼうけ。

幸か不幸か、朝からの体調不良が悪化してきていたことで、苛々を体調不良にすり替え、怒りとして表面化させずに済んだ。彼を職場へ迎えに行き、一緒に帰る。

部屋に着いて直ぐに嗽手洗いをしてリビングに戻ると、エプロンをするのも忘れ、白い粉にまみれて調理を始めている彼。一日遅れのホワイトデーに対する真剣な姿勢に、それまで苛々していた自分が哀しくて涙ぐんでしまう。このことは後から何らかの形で彼に伝えればいい、一緒に過ごす時間は楽しもう、と気持ちを切り替えた。

彼が調理している間、日記をつけたり動画を見たりする。苛々が消えると空腹を感じ、増えすぎたお菓子の為新しく作られていた箱を漁ってプリッツプリングルスを開け、キッチンに立つ彼に分けながら食べた。

焼き時間に四十分かかるというので湯を沸かし、先にお風呂に入らせてもらう。待つだけの状態まで終えた彼も後から入ってきた。先に上がると眩暈がして、しばらく壁にもたれて頭を下にしていた。体調不良も辞めにしたい。

スキンケア、ドライヤーをしている間に彼もお風呂から上がって、食卓を整えていてくれた。

野菜のタルト。美味しそう。トニックウォーターで乾杯して食べる。少し塩がくどいね、となったけれど物凄く美味しかった。心のこめられた物はすぐに分かるし、食べると元気になる気がする。

食後、ウクレレの練習をする。彼はベースを出してきて弾いていた。コードを新たにいくつも教えてもらって練習する。人差し指の形的にテンプレの方法では弦を押さえられず、オリジナルの押さえ方を模索するのが大変だった。Beatlesの『Let It Be』、はちゃめちゃに拙いけれど弾けるようになった。そのあと彼に弾いてもらうと段違いに上手。もっと練習して上手く弾けるようになりたいし、色んな楽器を触ってみたい。

二十三時を回り、そろそろ止めよう、と歯磨きをして寝室へ行く。「東京、遊びに行ってこようかな」と彼に話す。「本を出す勉強にもなるだろうし、せっかくなら行っておいでよ」と彼の言葉にも乗せられ、行こう、と決めた。学生以来の東京、土地勘があまりにない。彼は自分が彼の元から離れ、M氏やI、Oの居る街に行く週末、心配で帰って来るまでは落ち着かないし、やきもちは妬いているよ、と言っていた。お付き合いする以前、よく彼等のことを話していたから。嫉妬からなのか、セックスの流れ。長い沈黙の後、眠りに落ちそうな時の「もし、(東京で)何かあったら自分が満足させられていないってことなんだと思う」と呟く彼の言葉が哀しかった。