緑のコトノハ

いつか人間になるかもしれません。ならないかもしれません。

2022/02/05

M氏に伝えたいことがあったけれど上手く言葉にならなかった。間に合わせの言葉では彼の相手を務められないと理解している為、自分の言葉にならないそれとは別の全く違う話をしてしまった。

お風呂から上がって1時過ぎには寝たと思う。

9時半頃起床。彼が修士課程まで修了した大学の卒展に顔を出すのに連れられる日。スマホを確認すると彼から雪が降ったから気を付けて来て、と連絡が入っていた。

居間に行くと母と長女が甥を眺めていて、自分もそれに加わって甥を抱かせてもらっていたら10時を過ぎてしまう。青汁だけ飲んで、急いで準備する。11時に家を出る約束をしていたのに、結局出たのは11時半前になってしまっていた。

12時前頃彼の家に着いて、荷物を置き、車を入れ替えてすぐに出る。

展示を見に行く前にお昼を、と行きたかったパスタのお店に向かうも予約してほしいと門前払いされてしまう。昨年長女の披露宴があった料亭の近くだった。あの辺りは空気が良いな、と感じる。仕方がないので彼が探してくれた展示会場近くのイタリアンのお店に電話して行くことにした。

席を予約した時間までの10分程でドラッグストアに寄り、飲料と避妊具を買う。

代打のお店は1度前に訪れたことのある場所だった。味は完全に忘れていたから然程感動もしなかったのだろうと期待せずにアマトリチャーナとチキンと野菜のグラタンのランチセットを1つずつ注文する。1品の量がどれも多く、味も良い。彼と奪い合うように食べ終えた。会計時、ハリーポッターの原作が飾られているのが目に入り、彼と話していると、店主の方が店名も魔法使いに因んでいる、と話してくれてハリーポッター話で盛り上がる。お礼を伝えて店を出た。

展示会場の美術館には14時頃に着いた。彼が教えていた最後の代、という5歳は歳下の学生たちが受付に沢山群がっている。人間だ、と思った。案内とアンケートを受け取って会場に入る。

展示を見て回る間中、在学生、卒業生、教授に至るまで沢山の人から、Yじゃないの、とか、Yさんじゃないっすか!、とか、あ!Yさ〜ん!、とか、引切り無しに声をかけられる彼。自分はというと、こわーい、と彼の後ろに隠れてばかりいた。特に男性5.6人の集団がこわかった。皆背が高く、洒落た洋服を着てバチバチに決めている。3学年下という彼らも、彼を慕っているようで、挨拶した後も何度も話しかけてきていた。お世話になったという教授には彼女です、と紹介され、愛知の大学に移籍するんだよと話してくれたので、自分も愛知の大学でした、と話す。味噌煮込みうどんでも奢るから一緒に遊びにおいでよ、と言われ、味噌煮込みうどんは好きじゃないです、と応えると、2人ともウケていた。そのあと、いくら何でもあの返しは正直が過ぎたな、と彼に言うと、ちゃんと言えるのは良いことよ、と言われた。

展示内容はどの学生のものも本当に素敵だった。割れないガラスのパズル、日本古来の色彩を扱ったアイシャドウ、雨のオノマトペを愉しむ美術館、使い込むごとに鮮やかな色を楽しめる椅子。特に死生観を意識させる為の施設の展示が面白かった。祈りの空間が特定の宗教の礼拝堂としてのものではなく、祈りの美しさを打ち出している点に惹かれた。

彼が学生の頃好きだったという同級生の妹の展示は独特な形の陶器でできた竹笛だった。その妹さんにどの笛の形が好きですか?と聞かれ、これ、というと、唯一自立できない不安定な子なので支えが要るんですよ、と説明される。私じゃん...と彼に言うと、あの小さい支えが俺だ、と。妹さんが自分のことを笛と支えの大きさの違いになぞらえて、存在大きすぎませんか、と突っ込み、彼はうん、大きいよ、と応えていた。

他にも映画を作った人や屋台を作ってもう既に仕事をしている学生の展示もあって、すご...しか言葉が出てこなかった。1つ1つの展示に対して作った学生が説明をしてくれる度、彼が「Yの粗探しターイム」と言って弱点を突くようなことをするので、「やめとけ」とツッコむと後輩の学生たちは笑っていた。「結構ツッコミが辛辣ですよね」と後輩の1人が話しかけてきたので「すみません、でも辛辣とはよく言われます」と言うと「的確で良いと思います」と言っていて、その後輩とはウマが合いそうだと感じた。その場では自分しか彼に物を言えないのだろうとも感じていた。

全部見終わって、デザインをする人たちはよく物事を考えているし、自分の意思が強く、適切な表現方法を知っている、言葉も大切にしているんだね、と感想を彼に話す。ただ、人間だ...地球だ...と言うと彼は笑っていた。

思ったよりも長居していて、美術館を出たのは16時頃だった。予定していた健康食品店に行くのを諦め、夕食の買い出しをして帰ることになった。

彼の家の近くの複合商業施設へ寄る。自分の突然の牛タン欲に彼は合わせてくれた。DAISOで買い物をした後、スーパー内の精肉コーナーや精肉店で牛タンを探すも見つからない。彼が精肉店の店員に尋ねると、肉のプロみたいな中年の男性店員が来て「うちは1頭買いをしてるから売り切れって書いてるけど、今日ちょうど和牛のタンが入って来たんで凄いタイミングですよ」と説明してくれる。200g切ってもらうことにして、その間スーパーで他の食材などの買い物をする。レバーや砂肝、生春巻用の野菜、牛タンならば、とビールも買う。帰りに精肉店に受け取りに寄ると、大きな牛タンが20切程。明らかに多いなと思っていると、また先程の店員さんが来て「1番下の1列はおまけしておきました」と。彼と居ると男性ウケが凄いな、と思う。笑顔が良過ぎるからだと思う。ランチのお店の店主にしろ、卒展で会った人達にしろ、お肉屋さんにしろ...彼はきっとモテてきただろうに、と自分と居ることの不思議を思った。

彼の家に帰宅してすぐ、本当にすぐ、続けざまに2度セックスをする。牛タンだけは彼が冷蔵庫に入れてくれていたものの、他の食材たちは片付け忘れられたままだった。

20時頃、お腹空いた、とベッドから出て音楽をかけ、夕食を準備し始める。ネギ塩牛タン、レバーの塩焼き、砂肝と野菜の炒め物、サラダ、生春巻。

食卓を完成させ、お互いにビールで乾杯する。念願の牛タンは美味しかったけれど脂がすごくてお肉類は食べ切れなかった。バルサミコ酢や林檎ジャム、オイスターソースなどで適当に作ったドレッシングが1番美味しいと言うと彼は爆笑していた。久しぶりのアルコールはたまになら良いな、と思える味。辛くなることもなく、レモンサワーも美味しく楽しく飲んだ。

アルコールで記憶が薄められているけれど、食後、ソファでセックスをしてからお湯を張ってもらってお風呂に入った。